上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
aifurisensu.png


『杉本流相振りのセンス』 杉本昌隆著  マイナビ発行

目次

序章 最新相振りの考え方

第1章 現代の相三間
・現代の三間飛車
・美濃の強敵・阿部流

第2章 相三間・先手浮き飛車型

第3章 後手△4四角型向い飛車

第4章 先手中飛車
・先手中飛車の現状
・先手中飛車対後手三間

第5章 角道オープン四間対策△2四歩

第6章 その他の相振り最新研究
・▲3九銀型金無双対後手矢倉
・先手中飛車・速攻銀交換
・相三間・序盤▲3八銀の是非
・△3五歩保留三間


本書は、杉本七段の相振り革命シリーズの6作目になります。前作『相振りレボリュー
ション』が発売されてから3年が過ぎました。まえがきには、相振り飛車にも角交換型
が増えて、新しいステージに突入した感があると書かれています。本書では、その
道を止めない現代相振り飛車
を中心にして解説されています。

各章の内容

第1章 現代の相三間

3手目▲7五歩に△3五歩と指す相三間飛車について書かれています。『相振りレボリ
ューション』では、後手5三銀型が解説されていましたが、ここでは5四銀型が取り上
げられています。相高美濃、高美濃対美濃の戦いは、『戸辺流相振り なんでも三間
飛車』にも載っていますが、端桂などの攻め方が紹介されています。

阿部流については、『相振りレボリューション』では簡単に触れられた程度でした。しか
し、本書では26ページ割いています。第1図からの攻防などは、相振り飛車を指す方
には参考になるでしょう。

CapD20140111.png


第2章 相三間・先手浮き飛車型

相石田流で、11手目に▲7六飛(第2図)と浮く形についてです。相三間の最新形として、
『菅井ノート 先手編』にも載っていましたが、4ページしか書かれていませんでした。本
書では、菅井ノートで研究課題とされていた局面以後の変化や、どのような駒組みを目
指したらよいのかが、主に先手の視点で32ページ解説されています。

相金無双は、手詰まりになりやすいので、先手は美濃に組むのが良いとしています。▲
7七桂と跳ねる形と跳ねない形が取り上げられています。7七桂型では、やはり7九角・
4六銀型(第3図)が理想形のようです。

CapD20140111_1.png


第3章 後手△4四角型向い飛車

3手目▲7五歩から、△1四歩 ▲1六歩 △5四歩 ▲6六歩に△4四角(第4図)と出
る形について解説されています。

△1四歩に▲1六歩は、石田流の本で、相振りにされて、端を攻められて損とは書かれ
ていますが、深く解説されていませんでした。本書ではどう指したら良いのかが、具体
的に後手の視点で書かれています。

CapD20140111_2.png

第4章 先手中飛車

第4章では、先手中飛車に対して、後手が向い飛車と三間飛車で戦う形が載っています。
『相振り革命最先端』で解説された5七銀型の現状や、5六飛型が解説されています。

なお、先手が左穴熊にする作戦は、取り上げられていません。これについては、改めて
本が出される予定だそうです。


第5章 角道オープン四間対策△2四歩

3手目▲6八飛に△1四歩と指し、▲1六歩と受けたら、△2四歩(第5図)から相振り
を狙う指し方が27ページ書かれています。向い飛車にして、端を狙う指し方が、後手の
視点で解説されています。

角道オープン四間対策に対して、相振りで戦う指し方は、11月に発売された門倉四段
の『角交換四間飛車 最新ガイド』に、三間飛車や四間飛車にする形も載っており、そち
らの方が詳しいようです。

CapD20140111_3.png

第6章 その他の相振り最新研究

章の初めには、菅井流に対する対策と、矢倉そのものを組ませない指し方について書か
れています。

相三間・序盤▲3八銀の是非では、11手目▲3八銀(第6図)について解説されています。
ここから、角交換して△2八角(第7図)と打ち込まれるのが気になりますが、将棋世界
(2011.12月号)の鈴木八段と永瀬六段の対談では、▲3八銀は成立していると書かれて
いました。本書での見解は、やや無理としています。

CapD20140111_4.png

△3五歩を保留する相三間飛車についても触れています。具体的には、3手目▲7五歩
に△3二飛とし、以下▲7八飛 △7二金 ▲5八金左 △2四歩 ▲4八玉 △2五歩(第
8図)と指す形が紹介されています。5手目に▲2二角成りとする変化については、詳し
く書かれていません。

CapD20140111_5.png

総括

杉本先生の相振り革命シリーズは、最新の相振り飛車を勉強する為のバイブル的な本
となっています。5月に『相振り飛車の教科書』が出され、これも最新形について書かれ
ていましたが、対象レベルを低くした感じでした。『杉本流相振りのセンス』は、上級~有
段者向けだと思います。

本書では、相振り飛車の主流が三間飛車の流れは、現在でも変わっていないと書かれ
ています。相振りで三間飛車を多く指し、最新形について研究したい方には、貴重な一
冊となるでしょう。

本書は、相振りのセンスとひねったネーミングですが、相振りの感覚を身につけてもら
うように、意識して書かれています。文中には、相振りのセンス(角道を通しておく)
どとして、32箇所ピックアップされており、その手順に潜む感覚・感性・構想といったも
のが理解できるようになっています。

もっとも、本を一読するだけで、相振りの感覚を身につけるのは簡単なことではありませ
ん。やはり、実戦で相振り飛車を多く指すことが大切だと思います。そして、折に触れて
本書を読み返せば、効果が上がることでしょう。


五段階評価

難易度:★★☆
内容:★★★
解説:★★★☆
実用度:★★☆

総合:★★★


誤字・脱字、明らかな間違い等ありましたら、お知らせください。
1つでも役に立つことがありましたら、クリックしていただければ幸いです。
にほんブログ村 その他趣味ブログ 将棋へ
にほんブログ村

スポンサーサイト
2014.01.11 / Top↑
『振り飛車4→3戦法』 戸辺誠著  マイナビ発行

image.png


目次

序章 4→3戦法の概要
第1章 居飛車からの▲2四歩対策(28ページ)
・速攻の▲2四歩
・△3二飛のタイミングで▲2四歩
・△3五歩のタイミングで▲2四歩
・まとめ
第2章 △3四飛、角交換型(33ページ)
・▲4七銀型の戦い方
・▲5七銀型の戦い方
・まとめと補足
第3章 △3四飛、角交換拒否型(27ページ)
・対ノーマル持久戦
・居飛車の趣向、引き角作戦
・居飛車、受け重視の二枚銀作戦
・まとめ
第4章 ▲6六歩対△3二飛+△3三角型(25ページ)
・△2二飛型急戦
・石田流を目指す、持久戦
・まとめ
第5章 先手番の4→3戦法、相振り飛車(41ページ)
・相四間飛車スタートの序盤戦
・対三間飛車
・まとめ
第6章 練習問題~腕試し~(41ページ)



3・4・3戦法についての定跡書が欲しいと思っていましたが、戸辺先生が『振り飛車
4→3戦法』を出されました。

4→3戦法とは、前書きに書かれているように「3・4・3戦法の思想はそのままに、駒
組みの手順をアレンジしたもの」です。具体的には、4手目に△3五歩と伸ばさないで、
△4二飛(第1図)とダイレクト四間飛車に振り、後から△3二飛と動きます。

本書では、全て10手目に△3二飛(第2図)と寄る形からスタートしています。

CapD20130404.png

4→3戦法は、後手番で石田流にするのが狙いです。しかし、△3四飛と浮く前に▲2
四歩と突かれたり、▲6六歩と角交換を拒否されたり、相振り飛車にされたりと、相手
の指し方によっては石田流にできない場合があります。目次を見ればわかるように、
それぞれの対応について一通り網羅して書かれています。

各章の内容について

第1章では、いろいろな局面(といっても3局面)で、居飛車からの▲2四歩問題につ
いて解説されています。よく見かける手順がほとんどで、第3図や第4図以下の変化
は主なものしか書かれていません。先手の指し手は他にも考えられるので、4→3戦
法を得意戦法にする為には、さらに研究する必要があるでしょう。

CapD20130404_1.png

第2章では、角交換型石田流(升田式石田流)にする形が取り上げられています。4
→3戦法が目指している形であり、実戦で最も遭遇しやすい形でもあります。しかし手
が広く、まとめるには難しい章だと思います。

ここでは、▲4六歩型と▲5六歩型の2つが解説されていますが、実戦で同じ進行にな
ることは少ないかもしれません。

個人的には、4→3戦法が潰れてしまうか否かは、石田流に組んだ後の展開に関わっ
ていると考えているので、もう一歩突っ込んだ内容(先手番での升田式石田流との違
いなど)にして欲しかったように感じました。

第3章は、先手が角道を止めて、後手にあえて石田流本組みに組ませる指し方につい
てです。引き角や二枚銀からの5筋位取りが解説されています。3手目▲6六歩、4
手目△3五歩の進行からも似た進行になるので参考になるでしょう。

第4章では、△3二飛と寄った時に▲6六歩と止められた場合の指し方について書かれ
ています。これに対して、24高段者の対局では、第5図のように△6二飛と動いて、穴
熊に組むことが多いです。角交換四間飛車でも見られる指し方ですが、それと比べる
と一手損しています。

本書では、向かい飛車(第6図)や4四銀型の石田流にする形が紹介されています。

CapD20130404_2.png

第5章では、先手で3手目▲6八飛と振った形から、相振り飛車に限定して解説してい
ます。相四間飛車、対三間飛車を取り上げていますが、やはり四間飛車→三間飛車に
して戦うのが優秀なようです。戸辺流の▲7七銀~▲6六銀と出る形も紹介されていま
す。


一読して残念に思ったことは、「△3二飛と回るところで△8二玉と美濃囲いを優先して
いたため、失敗することも多かった。」と、戸部先生は書かれていますが、なぜ7二玉
の位置で△3二飛と寄る方が良いのかが解説されていない点です。美濃囲いにしてか
ら△3二飛と回った時の失敗例も具体的に示して欲しかっように思います。


総括

本書は、マイナビのブログで4回に渡って内容が紹介されました。また、戸部先生がニ
コ生放送でこの戦法を解説するなど、かなり力が入っている本だと感じました。

対象レベルは、初級~中級者以上で、これから4→3戦法を指そうという方にも理解し
やすいと思います。反面、細かい変化や高度な内容は、省略されているものが多く、
有段者以上には、ややもの足りないかもしれません。しかし、全体を通して見れば、新
たな発見が多く、購入する価値は十分ありました。

4→3戦法という名称は、戸辺先生がつけたのだと思いますが、プロでは既にそう呼ば
れているのでしょうか?今後は4→3戦法という呼び方が定着していくと思われます。


五段階評価

難易度:★★
内容:★★★
解説:★★★
実用度:★★★

総合:★★★☆(3.5)


1つでも役に立つことがありましたら、クリックしていただければ幸いです。
にほんブログ村 その他趣味ブログ 将棋へ
にほんブログ村

2013.04.04 / Top↑
sugainote.png


待望の『菅井ノート 先手編』が発売されましたので、類書と比較しながら感想を書いて
みたいと思います。

購入前に本書の写真を見た時に、表紙が▲7六飛の局面なので、早石田の菅井新手
をメインにして書かれた本だと考えていました。しかし、目次を見ればわかるように菅
井新手(文中では▲7六飛早浮き型と表現)を特に詳しく解説した本ではありません。

石田流について約54%、先手中飛車が約36%、相振り飛車が約10%といった構成です。

目次
第1章 石田流急戦 (59ページ)
・▲7四歩急戦型
・▲4八玉型
・▲7六飛早浮き型
第2章 石田流持久戦 (41ページ)
・△3一玉左美濃
・▲7七角型
第3章 石田流VS角交換型 (32ページ)
・後手角交換型
・振り飛車の修正案
第4章 石田流VS△1四歩型 (16ページ)
・最新の△1四歩型
・△1四歩の対抗案
第5章 先手中飛車VS△6四銀 (57ページ)
・△6四銀対抗型-△2二玉型
・△6四銀対抗型-△3二玉型
第6章 中飛車VS持久戦 (25ページ)
第7章 中飛車VS一直線穴熊 (18ページ)
第8章 相振り飛車 (27ページ)
・定跡編
・実戦編



内容について

・▲4八玉型型(早石田9手目▲4八玉型)
この形については、将棋倶楽部24高段者の勝率が極端に悪く、あまり指す気にはな
りませんでした。その原因は、△4五角問題にあるわけですが、今まで指されていた
▲5五角は甘く、現在最善と考えられているのが▲7四飛(第1図)だとは、この本を
読んで初めて知りました。石田流急戦▲4八玉型の結論は互角としています。

・▲7六飛早浮き型(菅井新手)
『久保の石田流』では5ページ、『よくわかる石田流』では5ページでしたが、本書では
13ページ書かれています。菅井-谷川戦をベースに△4五角問題は振り飛車良しと
して、次に△3二銀と△2二銀を解説しています。

『よくわかる石田流』には△2二銀はよくないとされていましたが、本書では「最も形勢
のバランスを保つことができる一手」と書かれています。△3二銀の場合も、△3三銀
と上がれば同じ形になるのですが、△3二銀型で通した時にスイッチバック自陣角で
振り飛車十分としています。

△3三銀・△6二銀の形では、▲7四歩に対して△7二金(第2図)の受けは危険とい
うことと、それに代わる手の解説はこの形に興味がある人には必読です。ただ、『よ
くわかる石田流』で、先手十分と書かれている△2二銀 ▲7七桂 △3三銀の時に
▲7四歩と仕掛ける手には触れられていませんでした。

CapD20130128.png

・石田流持久戦
△3一玉左美濃では本組みについて、▲7七角型では左美濃5四歩型について書か
れており、第3図からの攻防がテーマになっています。これは、『石田流の基本 本
組みと7七角型』には載っていなく、『よくわかる石田流』とは重複する部分もあります
が、27ページに渡ってより詳しく解説されています。

▲4五銀 △2三銀に▲6五歩と仕掛ける手については、その変遷やなぜ指されなくな
ったのかを、久保先生の対局などを基にして説明しています。それに代わって指され
るようになった▲9六歩については、現在後手持ちの空気としています。

最後に斎藤慎四段戦で指された菅井五段の研究手▲9八香(第4図)が解説されてい
ます。一手一手に深い意味があるものだと感心しました。

CapD20130128_1.png

・石田流VS角交換型
▲7五歩に対する4手目角交換についてですが、△8八角成り ▲同銀 △4二玉に
は、▲6八飛の途中下車で先手指せるとしながらも、△8八角成り ▲同銀 △5四歩
に▲6八飛は、向い飛車にされて先手に苦労が多いと書かれています。

そこで、振り飛車の修正案として、最新形の▲同銀 △5四歩 ▲7七銀(第5図)を
取り上げています。▲7七銀以下、『よくわかる石田流』では向い飛車にする手が解
説されていましたが、ここでは向い飛車は不満として、中飛車にする手を本筋として
います。

なお、4手目角交換は『石田流の基本 早石田と角交換型』でも50ページと多く扱わ
れています。しかし、戸部先生の本では、△8八角成り ▲同飛 △4五角 ▲7六角 
△4二玉に▲3八金とする形と、角交換に▲同銀と取り、▲6八飛の途中下車から三
間飛車にする形が中心で、6手目△5四歩型には触れられていないので内容のだぶり
は、ほとんどありません。

・石田流VS△1四歩型
石田流に対して流行の4手目に△1四歩とする形が取り上げられています。他書には
あまりかかれていない形ですが、所司先生の『早分かり石田流ガイド』には18ページ
解説されています。

この形で注目されているのは、▲7八飛 △8八角成り ▲同銀に△3二銀の西尾流
(第6図)です。これは『早分かり石田流ガイド』では全く触れられていません。逆に本
書は西尾流に対する攻防が中心となっています。

西尾流が優秀で、振り飛車が苦戦している現状が書かれていますが、その対抗策や
菅井五段の研究手が披露されています。

CapD20130128_2.png

第5章~第7章の先手中飛車については、ざっと目を通しただけですが、最近公式戦
でよく目にする形が取り上げられています。中飛車についても、基本的な事項にはあ
まり触れられていないようです。先手中飛車にも菅井流があったのですね。

・相振り飛車
第8章では石田流対策としての相振り飛車という視点で、▲7五歩 △3五歩の相石田
流と△5四歩からの5三銀型向い飛車が解説されています。

相石田流では、当ブログでも解説した11手目▲7六飛型が最新形として取り上げられ
ています。5四歩型では、なぜその形が激減したのかが書かれています。

相振り飛車に関しては、他と比べてページ数が少なく、内容もやや浅く感じました。矢
倉に対する菅井流については、後手の戦法ということもあるせいか、取り上げられて
いませんでしたが、少し言及して欲しかったように思います。


まとめ

石田流についての本は、ここ数年で何冊か出版されました。本書は、取り上げられてい
る形は同じでも、内容に重複は少なく、他には出ていない手が多く解説されています。
特に最新形を追及している方には気になる形の情報が多く掲載されているのではないで
しょうか。

最新形の解説に重点を置いていますので、類書と比較すると難易度が高いと思います。
基本の部分の解説は少なく、長い手数で説明している箇所も多いので、並べながら読ま
ないとついていけませんでした。

また、図面3つで解説されている箇所があり、『菅井ノート』中の菅井ノートとして菅井五
段の研究が公開されています。(菅井ノートと明記されていないものもあり)その内容は
プロレベルだと感じましたが、興味深いものが多いです。

最後に気になった点ですが、形勢判断や指し手に疑問を感じるものがいくつかありまし
た。これは、菅井先生とアマの感覚との差なのかもしれません。


対象レベル 上級~有段

五段階評価

難易度:★★★★★
内容:★★★★
解説:★★★
実用度:★★★

総合:★★★★


1つでも役に立つことがありましたら、クリックしていただければ幸いです。
にほんブログ村 その他趣味ブログ 将棋へ
にほんブログ村

2013.01.28 / Top↑
『永瀬流 負けない将棋』 永瀬拓矢著 マイナビ発行

makenai.png

目次
・第1章 三間飛車
・第2章 中飛車
・第3章 相振り飛車
・第4章 その他
・コラム
・永瀬流 負けない将棋 総まとめ


永瀬五段が本を出されるというので、とても楽しみにしていました。私がこのブログを
書き始めたきっかけは、将棋倶楽部24での永瀬五段と菅井五段の将棋に出会ったこ
とです。お二人がいなければ、このブログは存在していなかったことでしょう。

本書は、永瀬五段が実戦を解説しながら、負けないための考え方や指し方などを伝授
するという内容です。アマ強豪の美馬和夫氏との対談形式になっています。美馬氏は
くだけた感じで、永瀬五段はストレートな口調で語っています。永瀬五段の顔の絵が、
いろいろな表情がありとてもユニークです。

この本で取り上げられている対局は31局です。第1章~第3章の22局については、
三間飛車・中飛車・相振り飛車のカテゴリー別に、序盤~終盤を3~5つの局面に分
けてポイントを解説しています。簡単な解説付き棋譜も掲載されており、1局につき7
~12ページの分量があります。ネットの『将棋の棋譜でーたべーす』に未収録(本書
発売時点)のものが7局ありました。

第4章では、その他として特定の戦法にはこだわらず、印象に残った局面での勝負術
や上達法・千日手についてなどのコラムが書かれています。


永瀬五段は、受けが強いという評判です。受けで有名な棋士は何人かいます。しかし、
受け方には、いろいろ個性があるようです。大山名人の金を引く受け、中村修九段の
受ける青春、木村八段の顔面受けなどが有名でしょう。永瀬五段は根絶やし流と言わ
れますが、受けを広い視点で考えているように思います。

本書では、
・囲いを盤面全体で考える
・自陣全体で空間を確保し厚みで受ける
・ポイントを上げたら、ディフェンスラインは下げる
・龍を引く手に好手あり
といった永瀬流の受けの考え方・思想が随所に書かれています。

厚みで受けるの好例が大石-永瀬戦です。第1図から△5三金~△6三銀と厚みで
穴熊の堅さに対応し、さらに△4四金(第2図)と出て、△4六歩~△3六歩と厚みを
活かして戦いました。美馬氏の「こんなに王様を薄くしていいのですか?」の問いか
けには、「相手は穴熊。食い破られたら負けなので、厚みでがっちり受け止める。」
と答えています。

CapD20121207.png

しかし、本書は永瀬流の受けを身につけてもらうという内容ではないと思います。永瀬
流の受けは高度であり、アマが簡単に真似できるものではないでしょう。永瀬五段は、
攻めと受けのバランスが大切と述べています。

本書には、石田流やゴキゲン中飛車の最新形についての情報も書かれています。永
瀬-村山戦(2011.5)では、▲5七角(第3図)には実戦で指された△4三角ではなく、
△5四歩が最善で、現在の結論は後手よしと解説しています。また、羽生-戸辺戦
(2012.4)での▲2八歩(第4図)は実は悪手で、最善は▲7八玉としています。

このようなへんこんだ歩は打つなとか、端歩の受け方、美濃崩しへの対応、ゴキゲン
中飛車での序盤のセオリーなど、実戦にすぐに役立ちそうなアドバイスも豊富に掲載
されています。

CapD20121207_1.png

この本には、辛抱という言葉が繰り返し出てきます。「無理には攻め合わないで、自
陣を厚くする」、「形勢がよい時には丁寧に、悪い時には辛抱」というのが、本書のテ
ーマである負けない将棋を指す為に大切な心得なのでしょう。そして、1番重要なの
は、番数を多く指すことだとまとめています。


『永瀬流 負けない将棋』は、個性的な若手棋士である永瀬五段の局面のとらえ方や
勝負術を知る絶好の書です。その感覚を自分の対局に活かすかどうかは読者しだい
だと思います。私は、大局観を考える観点が広がりました。多く書かれている実戦的な
アドバイスは、勝率アップにつながるでしょう。

永瀬五段の将棋に興味を持たれた方は文句なしに買いですが、三間飛車や中飛車を
指す方にもぜひ読んで欲しい一冊です。対象棋力は、中級~有段者だと思います。


五段階評価

難易度:★★★
内容:★★★★
解説:★★★★
実用度:★★★

総合:★★★☆(3.5)

1つでも役に立つことがありましたら、クリックしていただければ幸いです。
にほんブログ村 その他趣味ブログ 将棋へ
にほんブログ村


2012.12.07 / Top↑
isidakihon2.png

目次

プロローグ
第1章 ▲8六歩からの速攻    46ページ
第2章 ▲7四歩からのさばき   52ページ
第3章 待機策の8四飛型     52ページ
第4章 根強い人気の右四間飛車  28ページ
第5章 石田流外しの角交換    51ページ


本書の内容

石田流の基本【早石田と角交換型】は、石田流の基本【本組みと7七角型】の続編に
あたります。前作は角道を止めた石田流についてでしたが、今回は、升田式石田流
の解説が中心となっています。本書でいう早石田は、升田式石田流のことで、鈴木
流や菅井新手、久保流▲7五飛などは取り上げられていません。

升田式石田流をメインにして書かれた本は、私の知る限りでは升田名人の『升田式
石田流』しかありません。石田流の本で、升田式石田流を詳しく解説したものには、
所司七段の『石田流道場』(約70ページ)や高崎五段の『よくわかる石田流』(約60ペ
ージ)などがあります。

本書では升田式石田流について約150ページ書かれており、『升田式石田流』以来の
本格的な定跡書として位置づけられそうです。

升田式石田流は手詰まりになりやすいと言われます。本書では、「歩の上でさばく技
術」がサブテーマになっていて、いろいろな仕掛けや攻め筋が紹介されています。具
体的には、銀交換の手順、パスの技法、飛車の転換、サイドからの▲8五桂ポン、逆
サイドへの攻めなどです。

各章について

第1章 ▲8六歩からの速攻

升田式石田流を指す上での序盤の基礎知識と、7七銀型の▲8六歩から飛車交換を
迫る指し方が解説されています。この辺りはよくある内容ですが、第1図の△3五歩と
突く手は知りませんでした。これは、角交換振り飛車でも流行しています。この手に対
抗する次の一手は、なかなか思いつかない手でした。

CapD20121125_6.png

第2章 ▲7四歩からのさばき

『久保の石田流』や『よくわかる石田流』では、成立すると書かれている第2図の▲7
四歩ではなく、第3図での▲7四歩について書かれています。これは、本書では△6
三銀を早く上がるのは、▲8六歩からの速攻があるので、後回しにしているからです。
『久保の石田流』と『よくわかる石田流』では、簡単に2ページしか解説されていなか
った部分ですが、ここでは約50ページ使っています。

「▲7四歩と突く場合の考え方として、①角がさばけること、②銀の応援が間に合うこ
と。」、「このあとの目標を一言でいえば、6六の銀を6三の銀と交換すること。」など、
指し手を説明するだけではなく、その手の意味や考え方、狙いなどが明快に書かれ
ています。

CapD20121125_2.png

第3章 待機策の8四飛型

最新形の早く△8四飛と浮く形(第4図)についてです。『久保の石田流』では5ページ、
『よくわかる石田流』では14ページの分量でしたが、本書では、ここも約50ページ解
説されています。主に第5図から▲4六角と▲5六歩の変化が中心となっています。こ
れらについては、かなり細かい変化まで解説され、ハイレベルな内容となっています。

CapD20121125_3.png

しかし、菅井-大石戦(2011.7)、菅井-井上戦(2011.9)などでの▲6六飛(第6図)や、
永瀬-村山戦(2011.5)での▲5六歩 △4四歩 ▲5六角(第7図)などは解説されて
いないので、深く研究したい方は自分で調べる必要があるでしょう。

CapD20121125_4.png

第4章 根強い人気の右四間飛車

石田流に普通の右四間で対抗する形が取り上げられています。対右四間の決定版と
書かれてはいますが、特に目新しい指し方はなく、そこまでの内容はないかと思います。
山本流石田封じについては、コラムで軽く触れています。

第5章 石田流外しの角交換

4手目角交換についてです。▲同飛と取る形は、▲3八金と囲い△2八角の打ち込みを
なくす指し方が書かれています。

▲同銀と取る形については、△4二玉に▲6八飛と途中下車して、それから▲7八飛と
三間飛車にして戦う指し方が解説されています。

本書のコンセプトが『乱戦にしない』ということなので、同飛型では▲3八銀と囲う手、同
銀型では最新形の6手目△5四歩については書かれていません。

まとめ

戸部先生の定跡書と言えば、『なんでも三間飛車』や、石田流の基本【本組みと7七角
型】など、評価が非常に高いと思います。それは、よく知られている形だけでなく、最
新研究を惜しみなく、わかりやすく解説しているからでしょう。本書も戸辺ファンの期
待を裏切りません。戸部先生の語り口も一段と軽妙になっており、升田先生の石田流
+2六銀の話や、ココセについてなど面白い話もありました。

升田式石田流の最新形についてという観点から見れば、やや不満な点もあります。
本書では、部分的にはかなり深い所まで検討されているのですが、第6図や第7図な
ど省略されている変化もあります。永瀬-佐藤康戦(2011.6)の▲7七金や、鈴木大-
谷川戦(2012.4)での▲9七銀と上がる指し方などもできれば取り上げて欲しかったと
思います。

本書は、これから升田式石田流を学ぼうという方には、少し難しいかもしれませんが、
中級~高段者まで満足のいく内容となっています。升田式石田流を本格的に勉強し
たい方にはもちろん、公平な立場で書かれていますので、升田式石田流に悩まされ
ている方にも貴重な一冊となることでしょう。


五段階評価

難易度:★★★~★★★★★
内容:★★★★
解説:★★★★★
実用度:★★★

総合:★★★★


1つでも役に立つことがありましたら、クリックしていただければ幸いです。
にほんブログ村 その他趣味ブログ 将棋へ
にほんブログ村

2012.11.25 / Top↑

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。